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まずは、第一の戦略たる『認識』です。戦略を理解するに先立って「問題は命題(proposition)である」ということを確認しましょう。『解内在型』の問題は必ず解ける問題(既解決問題)なのですから、全ての問題は同一律(identity)と称される「A はA である」という命題に相違ありません。ここで、命題とは真偽の判定のできる文(4)を指しますが、この「真偽の判定ができる」ことこそ、実は解の一意性が存在している証なのです。
注(4)
「富士山は日本で一番目に(標高の)高い山である」(真)
「富士山は日本で三番目に(標高の)高い山である」(偽)
はいずれも命題ですが、
「富士山は日本で一番目に美しい山である」
は命題ではありません。そう思う方ももちろん多いでしょうが、富士山が世界遺産に指定されなかった理由なんて調べてみるとなるほどと思ったりもします。
問題は対象(object)と属性(property)によって構成されます。そして、例えば問題
「酸性溶液を青色リトマス試験紙に垂らすと○○になる」
において、○○に赤や赤色を入れるのは、対象と属性の対応関係が一意的に定まっているからです。ですから、
「青色リトマス試験紙に垂らすと赤色になる溶液は○○性である」
という問題(逆命題'inverse problem'と呼ばれる)も原則として可能になります。また、属性は『定性的』なものと『定量的』なものが存在します。例えば、
「pH(ピーエイチ・ペーハー)5である溶液は○○性である」
青色が赤色に変化するのは質的(qualitative)なものであるのに対し、その変化を量的(quantitative)に捕捉しようとする試み(5)結果の一つが水素イオン濃度(pH)を用いることです。
注(5)
人間は定量的な属性の表現を好む生き物です。「このスイカは甘い」では物足りなくなって、「このスイカの糖度は14度である」とうんちくを傾けられる糖度計を作りましたし、スポーツにおいても単なる勝ち負けを超えて勝率とかゲーム差などを考え、「いいピッチャーだ」という代わりに「防御率が1.35である」と言いたがります。そういえば天気予報もそうでした。今時「曇りのち雨」では通用しませんよね。やっぱり、役に立たなくとも「降水確率50%」…これでしょう。
ある人間(対象)を記述するのに「マイクは釣りが趣味である」とか「ヘレンは優しい」といった表現は定性的であり、「ヘレンは100mを12秒で走る」とか、「マイクのボーリングでのアベレージは180である」という表現は定量的です。また、同じ属性に対しても、この両者がともに対応できる場合があります。「マイクは太りぎみである」という表現が定性的であるのに対し、「マイクは体脂肪率が30%である」という表現は同じ内容を定量的に記述したものです。ですから、どうしても「ヘレンは体格が良くて、頭のいい奴だ」と語りたくなかったら、「ヘレンは身長177cmで体重が68kgであり、IQが170である」と言ってもいいのです。
このように、対象を表現するには、『定性』と『定量』という相補しあう2つの属性表現があります。そして、同一の対象を媒介して、『定性』と『定性』や、『定量』と『定量』の変換を含め、暗示された誘導による出題は多岐にわたります。
「pH(ペーハー)5である溶液を青色リトマス試験紙にたらすと○○になる」
においては、「pH(ペーハー)5である(定量)」ことから、対象となる溶液が酸性(定性)であることを理解し、酸性だから「青色リトマス試験紙が赤変する(定性)」ことを導くわけです。他の問題でも同様です。
「円周率は○.○○である」
判定に必要なものは定量的な知識だけです。もっとも、円周率が3.14159…といった無理数になることを証明せよとか、リトマス試験紙が赤変する理由を述べよなんて訊ねられると厄介ですが…。
「コロンブスの○○発見はA.D.1492年である」
「コロンブスの○○発見はA.D.○○年である」
この問題も含め、これもでのすべての問いにおいて、対象と属性、さらには属性そのものにおける定性や定量の対応を復元させてきたのが『認識』(recognize)です。ここで、復元という言葉に違和感を覚える方もいるかもしれません。ですが、先述したように、新大陸発見は謎に満ち満ちています。それでも「コロンブスがA.D.1492年にアメリカ大陸を発見した」ことを『解』の一意性を保証する事前の了解にしているからこそ、前述の『問』は『問』たりえているのです。
すなわちち、以前に「コロンブスがA.D.1492年にアメリカ大陸を発見した」を認めた(cognize)ことがあって、それを文字通り再び認める(re−cognize)からこそ○○が埋められる訳です。極端な話「史実などはどうでもいい(6)(by 私の知りあいの歴史家)」のです。
注(6)
あえて誤解を怖れずに…と付け加えておきます。史実が確認できない時代のものは解釈が全てである。そして、歴史家の数だけ解釈があるということらしいです。
時に並列、時に直列して対象を表現する定性的、定量的属性がバラバラにされたとき、それらの相関を復元していくことが認識的アプローチであり、私が戦略 Tと名付けたいものなのです。一つ問題に取り組んでみましょう。
【 例 題 1 】
正方形の折り紙ABCDがある。図のように辺AB上に点P、辺AD上に点Qをとり、線分PQを折り目(内側に折り曲げる谷線)として、△APQを折り紙の残りの部分に折り返す。このとき、頂点Aの折り返された位置をRとすると、点Rは折り紙のどの部分を動くか図示せよ。ただし、点Pは辺AB上、点Qは辺AD上をそれぞれ自由に動けるものとする(端点も含む)。
【 解答例 】
題意より、頂点Aが点Rに折り返されるとき、
谷線である線分PQは、線分ARの垂直ニ等分線になる。
ここで、PQを延長して直線PQを考えると、
この直線PQに関して、Rは頂点Bと同じ側に存在する。
よって、 BR < AB(一定) となる。
したがって、Rは扇形ABCの周及び内部に存在する。… (1)
一方、直線PQに関して、Rは頂点Dと同じ側に存在する。
よって、 DR < AD(一定) となる。
したがって、Rは扇形ACDの周及び内部に存在する。… (2)
(1)かつ(2)より、求める点Rの動く範囲は次図のようになる。
【 解 説 】
そもそも『折れ線・折り目』とは何なのでしょうか。題意にあるように、頂点Aが点Rに折り返されるとき、折れ線である線分PQは、線分ARの垂直ニ等分線になります。ここでは、『折り目』という定性的なものをいかに定量化するかが鍵を握っています。
もとの図形Fと、それが折り返された図形Gにおいては、Fに属するいかなる点αも、図形Gに対応する点βを必ずもち、αとβはどれを選んでも、折れ線に関して対称な位置に存在することは、紙飛行機を折ったり、折り鶴を作った経験などから、誰でも理解できることでしょう。
さて、本問で何より知りたいのは、点Rの振るまいです。いったいRはどこに存在するのかでしょう。2点A,Rから等距離にある点の集合が直線PQです。これは「等距離でなければ、直線PQ上には存在しない」ことを意味します。改めて言いますが、このこと(一意性)が保証されるからこそ、『解』は復元できるのです。ですから、直線PQ上に点Bが存在しない限り、BR < AB と定量(定式化)されるのです。また、直線PQ上に点Bが存在する場合、例えば点Pが、端点であるBに重なったときを考えてみると、
BR=AB(一定)であることより、点Rが点Bを中心とし、半径をABとする円弧上を動いていくことが観察されます。ですから、点Rが弧ACをその存在領域の境界としてもつことが予想されます。逆に、辺AD上を自由に動く点Qが、端点であるDに重なったときを考えてみると、点Rが点Dを中心とし、半径をAD(=AB)とする円弧上を動いていくことが観察されるので、おおよそ結果は推測できます。
少し難しい問題だったかも知れませんが、このように『定性』と『定量』の関係を意識しながら解答を考えていくアプローチの仕方を方略として確認しておきましょう。さらに、2番目の戦略として、解析的アプローチがあります。私は戦略 Uと名づけています。
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