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随想 文月 |
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浜辺には海の家があります。最近でこそ洒落たビーチハウスなどと称するものも出現していますが、 かき氷などで涼を取り、ゴザの上でまどろんでいると、遠く雷の音が聞こえ、今までの青空が一転黒くなってきました。夕立です。風も強くなり、海に入っていた人々も急ぎ上がってきます。 軒先の風鈴も吊るしている糸が切れんばかりに鳴り続けて、小さい嵐の襲来を告げます(何だか表題音楽の解説のようですね)。広重の浮世絵さながら縦縞のスクリーンが視界を覆い、トタン屋根をたたく雨音が耳を塞ぎ、遮蔽された空間に放り込まれます。焼け付いていた砂浜が冷やされるとき、錆くさい夕立の匂いが生暖かさとともに立ち上ってきます。しばし現(うつつ)の世界を離れていると、雷鳴が遠ざかり、庇から雨垂れの音がしていることに気付かされます。 これで、海に虹でもかかっていれば、映画のラストシーンとなるのでしょうが、そんな演出などなくとも、朱に染まっていく黄昏の空は見飽きることがありません。
夕日が海に沈んでゆく日本海側も素晴らしいのですが、沈む陽に映し出された紅い雲に一日の終わりを感じる太平洋側もなかなかです。ウミネコがミャー、ミャーと鳴く小さな港の防波堤は、少年少女の日に送った夏の一日は、かくも甘美なものだったはずと追想する大人たちが多くいるからでしょう。日暮れ時は、海岸の平均年齢が少し高くなるような気がしませんか。 |
© 2002 ynishioka.
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