僕は、自分の携帯電話の待ち受け画面を各月毎のカレンダーにしています。その背景にはその月を象徴する行事にちなむ絵柄が採用されていて、12月はクリスマスツリー、1月はお供え餅、3月は雛人形といったぐあいに、いかにもといったものが選ばれています。ところが2月はスノーボードのカットなのです。今時、2月に限ってゲレンデに行くなんていう人もいないでしょうから、なんか違うなぁとため息をつきつつ描いているデザイナーの様子が目に浮かびます。節分という手もあったかも知れませんが、節分は一応年に4回ありますし、春の節分は鬼っていうのもなんとなく抵抗ありますね。
そんな彼女(彼)の苦境を救うべく登場したのが「バレンタインデー」です。菓子業界の謀略説も囁かれる中、この国のイベント空白地帯を埋めるかのように、突如出現し、あっと言う間に2月の風物詩となってしまいました。ただ、やっぱりキャラは立ちにくいですね。まさかチョコレートを絵柄にっていうのも今一つピンと来ないですし、ハートマークでは「おいおい」って感じです。ツリーや門松に匹敵するようなシンボルを菓子業界あたりに考えてもらうことにしましょうか。
さて、僕にとっての2月は「水仙」の香りとともにやって来ます。走りのものは年末あたりから花屋の店頭に並んで、通りを行き交う人々に、その芳香を振り撒いています。切花でも十分に嗅覚を刺激する水仙ですが、露地では群生するせいもあって、その香りは一層際立ちます。三大名所とされる越前、伊豆、房総などではさらに見た目にも華やかです。
まぁ、圧倒されるような群落も捨てがたいのですが、この花々に対する僕の原風景は、少年期を過ごした家で隣家との境にそっと咲いていた水仙の一群です。寒さに強い花であると同時に、日陰でも十分に育つ逞しさを備えていたことが、花の少ない時期ということも手伝ってか、春の予兆を感じさせるサインとして鮮明に記憶に残っています。
その名前がギリシア神話のナルシスに由来するように、西欧でも有名な花ですし、中国でもポピュラーな花です。品種も様々にあります。しかしながら、ひいき目半分にせよ、在来種である和水仙(わずいせん)がもっとも可憐で、芳しいと小生は感じます。冬の凛とした空気にすっくと立つ姿は、この国のどこにおいても様になる光景でしょう。 [next]