梅雨明けを告げる雷が鳴り出し、盛夏を間近に控えたこの月を感じさせる風物と言えば、 目には 平家ボタル でしょうか。六月の初旬には飛び始める源氏ボタルよりも一回り小さく その名の由来を思い出させます。放つ光も源氏のそれよりも弱いのですが、料亭の演出では ないのですから、竹林に施すようなライトアップの強さはもちろん不要で、初夏の風情を 味わうには十分な瞬きといえます。それにしても平氏が源氏に負けたことが後世『蛍』の 名前にまで影響を残そうとは、清盛も義経もついぞ思わなかったことでしょう。
一方、耳には断然… 蜩 (ヒグラシ)です。あの「カナカナカナ」という鳴き声は早朝も聞けますが、やはり日が落ち暑さが少し和らぐ夕暮れに耳にしたいものです。夜の帳(とばり)が迫る時間に漂うもの哀しさを味わうには最高のBGMです。昏にはボサノバ、闇にはジャズと決めている小生も、この季節、「蜩」の音色だけは別格です。いかにも彼らがいるぞといった感じの雑木林で聞くのも好きなのですが、葦簾(よしず)を下ろした畳の部屋で涼んでいるとき、 少し遠くに「カナカナ…」と消え入りそうに聞こえるのがまたいいのです。近年はなかなか理想の状態で鑑賞するチャンスがないのが残念です。 [next]