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    11月                            vol.5




  票の重み     







 「等分する」ことは平等を演出する上での必要条件なのだと考えるからこそ、議席の配分問題も切実なものになります。いわゆる1票の格差問題にしても、議員定数問題にしても、選挙区の区割り問題にしても、どう改善(…しているつもりなのだろうが)してみても選挙民に不満は残ります。他にも、選挙方法をめぐっては、様々な問題点が指摘されています。
 例えば、比例代表制です。「拘束名簿式比例代表制」などという名称は、選挙のたびに登場してきます。日常使い慣れた概念でもなく、まして、離党した人間が議員を辞めたり、辞めなかったりすると、そんな曖昧な解釈を許す制度って、一体何なんだと思ってしまいますね。
 選挙民の投じた一票が、果たして個人に向けられたものなのか。それとも、所属政党を支持してのものなのか、そもそもはっきりしてもいませんし、票を入れたい個人と、入れたい党が違うなどといった捩れ現象もたびたび起こることなので、無理は承知でということになるのでしょう。他に代案がないからというのが理由なのは正直言って寂しい限りです。
 さらにわかりにくいのは、その比例区における議席数の配分方式にもあるようです。

例えば、10人の議員を選ぶ場合、総得票10,000票のうち、
   X党が5,000票
   Y党が3,000票
   Z党が2,000票
を獲得したとすると、
X党が5議席、Y党が3議席、Z党が2議席を獲得することに異論を唱える人はそんなにいないのでしょうが、これが、
   X党が4,800票
   Y党が3,100票
   Z党が2,100票
となったら、百票の位を四捨五入して、X党が5議席、Y党が3議席、Z党が2議席を獲得することにしてよいのでしょうか。また、
   X党が4,500票
   Y党が3,500票
   Z党が2,000票
だったら、どうするのでしょうか。
百票の位を四捨五入して、X党が5議席、Y党が4議席、Z党が2議席を獲得することする・・・なんて出来ない相談ですよね(合計11議席になってしまう)。さらに、
   X党が3,500票
   Y党が3,499票
   Z党が3,001票
だったら、どうするのでしょうか。
X党が4議席、Y党が3議席、Z党が3議席で納得ですか。さらにさらに、
   X党が3,334票
   Y党が3,333票
   Z党が3,333票
だったら、X党が4議席、Y党が3議席、Z党が3議席という配分に異議を唱えるでしょう。こういう僅差の結果になると、開票のやり直しを求める声が絶対にでてきます(00年のアメリカ大統領選挙を思い出してください)。


一方、総得票10,000票は変わらないとして、議員定数を削減し8人の議員を選ぶ場合。
   X党が5,000票
   Y党が3,000票
   Z党が2,000票
だったら、どのように議席を分配しましょうか。しばし、考えてみてください。
とにかく、X党、Y党、Z党の得票率が5:3:2則ち、
50%,30%,20%になりますから、議席もその比に分ければいいと考えて、
   X党が  4 議席
   Y党が 2.4議席
   Z党が 1.6議席
でも、議員だって人の子だから、切り刻まれたらいやだろう(たとえ、選挙中は、皆様のためならこの身はどうなっても構いませんなどと叫んでいても…)。だったら、四捨五入して、
   X党が 4議席
   Y党が 2議席
   Z党が 2議席
ってところでどうだろう…なんて言われて納得しますか。
納得とおっしゃる方には、是非次の状況を考えていただきたいものです。


さて、4人の議員を選ぶことにしましょう。総得票10,000票のうち、
   X党が5,350票
   Y党が3,400票
   Z党が1,250票
を獲得したとします。
この場合、X党、Y党、Z党の得票率は、
   0.535 : 0.340 : 0.125
ですから、議員総数である4を乗じて、
   X党が 4×0.535=2.14議席
   Y党が 4×0.340=1.36議席
   Z党が 4×0.125=0.5議席
だから、四捨五入して、
   X党が 2議席
   Y党が 1議席
   Z党が 1議席
としたとします。さて、問題はここからです。
これでは、Y党にあまりに不利だからと、定員を1人増やしたとします。
則ち、5人の議員を選ぶことにします。総得票10,000票のうち、
   X党が5,350票
   Y党が3,400票
   Z党が1,250票
という獲得票数は変わらないとして、同様に配分を考えると、
X党、Y党、Z党の得票率は、同じく
   0.535 : 0.340 : 0.125
ですから、議員総数である5を乗じて、
   X党が 5×0.535=2.675議席
   Y党が 5×0.340=1.7議席
   Z党が 5×0.125=0.625議席
となります。そこで、四捨五入すると、
   X党が 3議席
   Y党が 2議席
   Z党が 1議席
となりますが、合計が6議席となりどこかの党から、1議席を返還してもらわなくてはなりません。となると、整数部分ではない端数(小数部分)を比較することに大抵なるのですが(スポーツの採点競技などと同様)、各々について、
   X党が 0.675議席
   Y党が 0.7議席
   Z党が 0.625議席
となっているので、Z党が議席返上をすることになります。その結果、
   X党が 3議席
   Y党が 2議席
となり、なんと不思議なことに
   Z党は 0議席
になってしまうのです。
パイが大きくなったら、分け前は増えるのが普通なのに、このケースでは、分け前が減ってしまうのです。
 このように、四捨五入したり、あるいは一定の数で割り算して余りの多い順に議席を追加する方法を採用すると、このような不合理を産み出すことがあります。19世紀のアメリカで下院の議席定数の再配分を検証していたときに、アラバマ州の定数配分について初めて気付かれた事実なので、このような現象を「アラバマのパラドックス」と呼んでいます。










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